🚶♂️家庭裁判所の駐車場にて──弁護士と静かな合流
調停離婚に向けて、私は家庭裁判所の駐車場で弁護士と待ち合わせていました。
2年3ヶ月にも及ぶ交渉のすべてを終わらせる日。調停条項にお互いが合意すれば、離婚は正式に成立します。
駐車場に着くと、弁護士の車はすでに停まっていました。車越しに軽く目が合い、私たちは無言で車を降りて、ゆっくりと家庭裁判所の入り口へ向かいます。
言葉は必要ありませんでした。すべてを語り尽くした後の、静かで重い空気だけが流れていました。
🪑 妻とのすれ違いと、胸を刺す“笑顔”
建物の中に入り、1階のベンチに目をやると、そこには妻の姿がありました。おそらく、彼女も弁護士の到着を待っていたのでしょう。
私は平静を装い、まるで彼女の存在に気づいていないかのように無表情で通り過ぎます。
私のその仕草を見て、弁護士が「今の、奥さんですか?」と静かに尋ねてきました。
「はいっ」とだけ答え、私は足早にエレベーターへ向かいました。
エレベーターの扉が閉まる直前、妻の弁護士が現れ、それを見た妻が立ち上がり、満面の笑みを浮かべるのが見えました。その瞬間、胸に何とも言えない痛みが走りました。
🕰️ 調停室の静寂と、“終わり”の読み上げ
エレベーターを降りたフロアは静まり返っていました。私は別室に案内され、妻とは別々に待機します。
やがて、私の弁護士だけが呼び出されていき、私はひとり天井を見つめながら、ぼんやりと時間の流れに身を委ねていました。
「……何やってんだ、俺」
しばらくして弁護士が戻り、「調停条項を読み上げ、双方が合意すれば成立です」と告げます。
無言でうなずき、私は調停の場へ。
部屋には妻とその弁護士、裁判官1名、家庭裁判所の職員2名が座っていました。
事前に確認した調停条項の読み上げが始まり、粛々と進行していきます。そして、互いの同意が確認された瞬間――
調停離婚は、成立しました。
🌫️ 実感のない帰り道と、“錯覚”の安堵
家庭裁判所を出て、駐車場まで歩く道のりは、どこか現実感が薄れていました。私は弁護士に一言だけ感謝を伝え、車に乗り込みます。
「やっと終わった。これで平和な生活が戻ってくる」
そう思ったのです。
けれど、それは“錯覚”でした。
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