💡 迫るイベント前夜
Dさんが準備してくれたギター体験会のイベントが、いよいよ明日に迫りました。
お店の集客のために開くわけじゃない。
彼女がここまで準備を進めてくれたのは、きっと──すべて、俺のためだ。
そんな想いが胸に込み上げてきました。
ここまでしてくれたDさんに、甘えていいはずがない。
もちろん、彼女が「やろうよ!」と背中を押してくれた。
でも、それに応えて、次へ進めるかどうかは自分次第だ。
何もかも用意された舞台に立つだけなんて、ごまかしにしかならない。
焦りとも、決意ともつかない気持ちに駆られ、俺はいてもたってもいられなくなりました。
🎤 確かめたかった気持ち
イベントの目的、内容、そして今後の展開──
それらをちゃんと整理したくなった。
同時に、きっと、もう一つ確かめたかったんだと思います。
「なぜ、彼女はここまでしてくれるのか?」
ただの好意?
それとも、なにか裏があるのか?──そんな疑念を抱いていたわけじゃない。
でも、本当のところを、直接顔を見て聞いてみたくなった。
俺はDさんを誘い、打ち合わせを兼ねて食事に行くことにしました。
待ち合わせ場所に現れたDさんは、いつも通りの笑顔でした。
そして、当たり前のように俺を車で迎えに来てくれた。
👩🎓 強さの理由
食事をしながら、イベントの細かい打ち合わせを進めた。
ターゲットとなる参加者層、ギター体験会の流れ、当日用意するべきもの……。
段取りの確認が一段落したとき、ふと、Dさんはこんな話をしてくれました。
「私ね、本気で頑張ろうとしてる人を、応援したくなっちゃう性格なの。」
真っ直ぐな瞳でそう言った彼女は、どこか少し寂しげにも見えた。
これまで、彼女自身が助けを差し伸べられることなく、孤独の中で生きてきたこと。
だからこそ、自分にできる範囲で、誰かを支えたいと思うようになったこと。
そして、時には騙されたり、裏切られたりした過去もあること──。
言葉を選びながら、静かに話してくれた。
助けることで、自分が傷つくこともある。
それでも、目の前に頑張ろうとしている人がいるなら、手を差し伸べずにはいられない。
そんなDさんの想いが、ひしひしと伝わってきました。

✨ 迎えに来てくれる理由
今まで、Dさんと食事に行くたび、必ず彼女が俺を迎えに来てくれました。
そのたびに「そんなに気を遣わなくていいのに」と思っていた。
でも、この日の話を聞いて、少しだけわかった気がしました。
たとえ小さなことであっても、
「自分ができるサポートを惜しまない」
それが、Dさんなりの生き方なのだと。
彼女にとって「誰かを迎えに行く」という行為は、単なる親切以上の意味を持っていたのかもしれない。
孤独の中を生き抜いてきた彼女だからこそ、自然に、誰かに寄り添おうとする。
胸の奥が、じんわりと熱くなるのを感じました。
🚀 失敗は許されない
絶対に、このイベントを失敗させるわけにはいかない。
ここまで背中を押してくれたDさんの想いを、裏切るわけにはいかない。
もちろん、不安はある。
「参加者が集まらなかったらどうしよう」
「当日、うまく進行できなかったらどうしよう」
そんな考えが頭をよぎる。
でも今は、それ以上に強く、「やり遂げたい」という気持ちがある。
ギター講師としての第一歩。
それは、単に教える技術を磨くこと以上に、自分の人生に覚悟を持つことだった。
俺は静かに拳を握った。
そして、心の中で誓った。
──絶対に成功させよう。
たとえ小さな体験会でも、俺にとっては人生を変える第一歩になる。
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