ある日、子供の何気ない一言に、私は深く動揺しました。
「ママ、Bさんと結婚するんだって」
まさか――。
それが事実なら、あまりに早すぎる。しかもその“Bさん”とは、あの不倫相手です。
私は以前、B氏に対して内容証明を送っています。その文面には、「離婚が成立するまでに不貞行為があった場合、追加の慰謝料を請求する可能性がある」と記載していました。とはいえ、実際に法的な強制力があるわけではなく、それは牽制の意味合いに過ぎませんでした。
でも、やはり気持ちは複雑でした。
離婚成立前から、妻は子供を連れてB氏と会っていたようでした。私との別居が始まってからも、その関係は続いていたようです。子供は母親から口止めされていたのでしょう。それでも、ポツリポツリと、私にいろんなことを話してくれました。
「一緒にご飯食べに行った」とか、「あの人の家に遊びに行った」とか――。
その小さな報告が、私の胸を締めつけるのです。
まさか、このタイミングで「再婚」なんて言葉を聞くことになるとは思いませんでした。
最近、妻が急にローンの借り換えに積極的になった理由も、ようやく合点がいきました。再婚を見越して、家の名義やお金の流れを整理していたのかもしれません。
でも、何より引っかかったのは――B氏の本音でした。
私はかつて、証拠集めのために妻とB氏のLINEのやり取りを記録していました。その中で、B氏は妻との関係を「遊び」だとはっきり言っていました。
しかも、妻はそれを理解した上で関係を続けていた。
それなのに、どうして今さら「再婚」なのか。彼の気持ちが変わったのか? それとも妻が一方的に期待しているだけなのか?
混乱の中、数日後の面会日に私は思い切って子供に尋ねました。
私「ねえ、ママってBさんと再婚するの?」
すると子供は、あっさりと言いました。
子供「知らなーい」
拍子抜けするほど、軽い返事でした。
どうやら、あの“再婚”発言は子供の作り話だったようです。
その後も、子供はときどき不思議なことを口にしました。
「うちで犬を飼い始めたんだよ」――そんな話も、後で確認すると事実ではありませんでした。
私はあとになって知ったのですが、私と妻が別居してから、子供はたびたび“嘘”をつくようになったそうです。
きっと、心のどこかで混乱しているんだと思います。寂しさや不安、言葉にできない感情を、自分なりの方法で表現しているのかもしれません。
嘘を責める気にはなれませんでした。
むしろ、「ごめんな。全部、大人の都合でこんなふうになっちゃって」――そう心の中で謝るしかありませんでした。

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